――深夜12時。ひとつずつ小さなバックを持ってアパートを出た。
「雨で濡れてるから滑るなよ」
「うん」
聡ちゃんと手を繋いで階段を一段ずつ降りていく。駐車場に停めてある車についた時……
真っ暗な視界が突然明るくなった。
あたし達を標的に照らされたライト。眩しくて、目も開けられなくて聡ちゃんにしがみついた。
「……早かったな」
逃げても、逃げ切れると思ってなかった。
「警察だ! 女性を離せ!」
だけど、少しでも長く聡ちゃんと一緒にいたかった。
「やだ! 聡ちゃん!」
あたし達はただ、普通の生活を望んでいただけだったのに……
聡ちゃんは警察官二人に取り押さえられて、あたしも一人の警察官に腕を強く掴まれて自由を奪われた。
「人質確保しました!」
違う……あたしは人質なんかじゃない!
「聡ちゃん! 聡ちゃん!! 連れて行かないで!!」
どんなに泣いて叫んでも、ここにいる大人達はあたしの言葉は聞き入れてくれなかった。
聡ちゃんは手錠をされ、無理やりパトカーに乗せられて行ってしまった。
警察なのに……あたし達を守ってくれる人達なのに……
あたしには悪い人達にしか見えなかった。


