「ふわああ……聡ちゃん、ナイフとフォークがいっぱいある。どれ使えばいいの?」
「適当に使え。なんなら箸もらうか?」
「ラミカさん、外側から使うのよ。前菜、スープ、お魚、お肉、デザート全て違うもので頂くの」
「洗うのもったいない! あたし、お箸でいいです」
お袋の説明を聞いて、ラミカはボーイに箸を頼んだ。てか、ラミカらしくて笑える。
「久しぶりだな。こうして家族四人が揃って食事をするのは」
「俺は家族じゃねぇ」
「聡ちゃん! またそんなこと言うんだから。お父さんの気持ちはもう分かってるでしょ?」
親父は……な。お袋はシャンパンを飲むとフッと笑った。
「あの時、ひどい母親だと思ったでしょ。でもね、母さんは周りにいた好き勝手言う奴らに見せてやりたかったのよ」
何を……?
「聡一は本当は優しい子だって。危険をかえりみずに親を助ける子だって……」
全ては俺のため……?
「助けるフリでもしてくれたら、いくらでも母さんは聡一の盾になるつもりでいたわ。聡一に心臓をあげてもいいくらい親は子供を想うものなのよ」
酒が入るとお袋は本音しか言わない。これがお袋の本音……心意……
俺は親不孝者なのに……きちんと想われていた。


