「どうして聡ちゃんにそんなひどいことを言うんですか? あなた達が聡ちゃんを苦しめたから家出したのに気づいてないの!?」
「ラミカ、お前……」
「お前ら、俺の存在を忘れてるだろ!? 無視して話をするな!!」
「ちょっとおじさんは黙ってて! 聡ちゃんのお母さんもおかしいよ。普通は逃げなさいって言うのが親なのに……て、あれ?」
あれって……緊迫した空気の中にマヌケなラミカの声が響く。そして、首をかしげて親父を見た。
「聡ちゃんのお父さん……。聡ちゃんを守るためにわざと突き放すようなこと言ったんでしょ?」
「ふっ……面白いお嬢さんだ。これは、私達の問題だからだよ。さあ、帰りなさい」
「ダメだよ! あたしは帰りません! 聡ちゃんも本心を知りたいんです。お父さんは聡ちゃんのこと……」
「お前いい加減にしろぉー!!」
「きゃあ!」
いつまでも、シカトされていた犯人はお袋を突き飛ばすとラミカの手をひいた。
しまった!ラミカが人質にされ……
「え……」
人質にされると思ったのに、親父がラミカの肩を抱き、犯人の男から引き離した。
「聡一様!」
「おう!」
皆吉さんのかけ声と共に、二人で犯人に飛びかかった。
俺が犯人の足を払いバランスを崩したところで、皆吉さんがナイフを握った右腕を背中に締め上げた。
「うがっ……! やめろ! ちくしょお!」


