「聡一とお付き合いしている子だったの。お父様は何をされているの?」
「夜逃げして、行方不明です。今は何をしているのか分かりません」
バ、バカ正直に答えんな――!!
「フフッ、冗談がお上手ね。面白い子」
全然面白くねぇし!マジで答えるラミカもラミカだけどお袋も相変わらず……
「で、本当は何をされているのかしら?」
「体裁ばかり気にする奴に、本当のことを話す必要はねぇよ」
地位や名声のある者だけにしか興味のない人間に、ラミカのことを紹介したくない。
姉貴は俺達の会話を聞きながら、ニヤニヤしながらメモをとっている。どいつもこいつもムカつくな。
「百合子、何をしている。お帰りになる先生方をお見送りしなさい」
「はい」
ゆっくりと歩み寄ってきた親父。俺のことをチラリとも見ようとしない。
もう親子の縁は切ってるし、気にもならねぇけど何故か緊張する。
「ねぇ、この人が聡ちゃんのお父さん?」
「違う」
親父の前でキッパリと言うと、フッと笑みを溢した。
「お嬢さん、私には杏という娘しか子供はいませんよ」
「――っ! なんでそんなこと言うんですか!?」
ラミカの声がホール全体に響いた瞬間
出口から悲鳴があがった。


