「……迎えに行くから待ってろ」
くそ姉貴、ラミカを一人にさせるなんて絶対に計算してんな。どこまでシナリオ作ってるんだよ?
携帯を切って、一度は丸めてゴミ箱に捨てた招待状をポケットから取り出した。
「Aホテル……」
ここからはそう遠くない。車を飛ばして、15分でホテルの駐車場に着いた。車から降りると、後ろから聞き覚えのある笑い声が聞こえてきた。
「バカねぇー。そんなヤクザみたいな格好でこのホテルに入れるわけないでしょ?」
「ヤクザみたいって、ヤクザだから仕方ねぇだろ。ゾンビ衣装はどうしたんだよ?」
普通に黒のドレスを着た姉貴と皆吉さんがいた。
「トイレで着たわよ。だけど会場に行く前にクソババアに見つかってこの様よ」
お袋には姉貴のすることはお見通しってことか。
「姉貴が実家主催のパーティーに素直に行くほうが怪しいからな」
「チッ。クソババアと同じこと言うんじゃないわよ。ムカつく」
「それより、ラミカは?」
「知らない。今頃、逆ハー状態なんじゃない?」
「連れて行ったなら最後まで目を離すなよ!」
ホテルに向かおうとした俺を、姉貴は腕を掴んできた。
「だからその格好じゃホテルはNGよ。皆吉、聡一の着替え」
ニヤリと笑う姉貴。……着せ替えごっこは三者面談でこりごりなんだけど。


