「聡ちゃんをヤクザの世界から解放してあげて下さい」
「……聡一がそれを望んでいるのか？」
「分かりません。でもあたしが学校を卒業したら、きちんとした職に就くって言ってくれたから……」
「きちんとした……ね」
その時、あたしのバックから携帯が鳴った。
「聡一からじゃねぇか？ とりな」
「すみません」
堂島さんの言う通り、聡ちゃんからの着信だった。
「もしもし」
『お前、今どこにいるんだよ？』
「堂島さんと事務所に……」
言いかけた言葉は途切れた。あたしの手から堂島さんが携帯を取り上げたから。
「携帯にはいつでも出られるようにしてろって言ってるだろ！ お前の女が姦される前にさっさと来やがれ！」
いきなりの罵声にあたしの体はビクッと震えた。怖い……
やっぱり、この人は本物のヤクザなんだ。
「飛ぶ計画を俺に言うなんて、ねーちゃんも相当なアホだな」
あたしは相談する相手を間違えてしまったらしい。
