泣いてると思ったのに……
「最悪! 結局海に入れなかったし、聡ちゃんとも全然遊べなかったー!!」
ベッドの上でバタバタとクロールの仕草をしているラミカ。無理してんじゃねぇよ……
「ラミカ」
「明日の朝、泳ぐもん。聡ちゃんと思い出つくる」
ベッドに腰かけて、ラミカの頭を撫でると俺の膝に顎をのせてきた。そして、両腕を背中に回して抱きついてきた。
「苦しかったら苦しいって言え。俺の前では無理やり元気にならなくていいから」
「……うん……悲しい……。あたし、お母さんに捨てられたように感じた」
こんなに素直で、明るくて、真っ直ぐに育った娘よりも
再婚相手の息子のほうをかばわれたら、そんな気持ちにもなるよな。
「……まだお前が母親のことを好きなら……許してやれ。きっと今頃、後悔しまくってる」
「そうかな……」
「ああ、ラミカに言われてその場に座り込んだろ。自分でも気づいてなかったんだ。母親より女としての人生を大切にしまっていることを」
ラミカの母親だ。きっとラミカを想って、今頃泣いて後悔している。


