お前が迎えに来るなって言っても俺は絶対に行くけどな。
携帯を握りしめてパチンと閉じた。
すでに恒は手紙に書かれた母親の姓と旦那の名前で、蘭達に指示を出して、地元の奴らに聞いて走り回っていてくれた。
そして、手がかりをつかめたのは案外早かった。
「吉田拓海は有名な資産家みたいです。ここの漁業にも投資してるみたいで、最近事務で入社した姐さんのお母さんと再婚したそうです」
「住所は分かったか?」
「はい、あの赤い屋根の家です。近いから早く行きましょう」
蘭の指差す赤い屋根の家は、高台にあって目立っていた。分かりやすい目印。日が暮れるまでに、行かねぇと。
俺の車に恒と琉生を抱いたエミちゃんを後部座席に乗せて、後ろからはバイクに乗った蘭達が続いた。
「資産家のわりには普通の家だな」
「別荘らしい。自宅はきちんと街中の高層マンションがあるってよ。ラミカちゃんの母親、玉の輿ってやつだな」
あんだけ貧乏な暮らしをしてたんだ。今の生活はさぞ、幸せだろうな。だけどラミカは絶対に金持ちが幸せだとは思ってない。
だからあんなに泣いて、助けを求めるような声を出していたんだ。


