「お父さんが蒸発した!?」
――車で5分くらい走った坂ばかりある道。海沿いの高台にお母さんの住んでいる家があった。
2階建ての素朴な家で、あたしはお母さんのパジャマを水着の上から着て、リビングのソファーでふくれていた。
「それで、風俗に売られそうになってヤクザにお金を肩代わりしてもらって一緒に二人で暮らしているの?」
「そうだよ! 何度も同じこと言わせないでよ」
聡ちゃん、きっと心配してる。早くビーチに戻りたいのに……
「ラミカ、こっちの高校に転校しなさい。卒業まで待てないわ」
「どうして!? 聡ちゃんはあたしを助けてくれた恩人なんだよ!」
「恩人って……しょせんヤクザよ? 危ない目に合うかもしれないのに。暴力ふるわれて無理やり一緒にいるんじゃないの?」
――は?
「……確かに。300万も肩代わりされたら拒否できないよね。ラミカちゃん、辛かったね。僕達と一緒に暮らそう」
ずっと黙って聞いていた拓海さんまでおかしなことを言ってくる。
本当だ。
陸先生の言った通り……。世間はあたしが無理やり聡ちゃんと一緒に暮らしてると思うんだ。