「聡ちゃんって有名人なの?」


「別に。俺の親が有名なだけだろ」



歩いて帰る見慣れた街。赤く夕焼け色に染まった二人の影が長く伸びていた。



「親って何してる人なの?」



……ラミカには……別に話してもいいか。



「俺んち医師家系でとにかく学歴主義で。ダチまで親が選んでいたくらい厳しい家だったんだよ」


「へぇ……聡ちゃんの両親は聡ちゃんにお医者さんになってほしかったんだ?」


「ああ、姉貴はあんな性格だし。俺に一点集中して勉強させて、俺が逃げ出さないように部屋に外鍵までつけられた。さすがにぶちギレて家出。好き勝手して親に反発してそれぞれの道に走ったって感じ」



姉貴はずっと好きだった漫画で成功して、親よりも名声と富を得た。俺は……



「俺がヤクザの世界に入ったのは、親へのあてつけみたいなもん。族に入ってる時にアニキの堂島さんに声をかけてもらったから。くだらねぇ理由だろ?」



俺には姉貴のように両親を見返せるほどの才能なんて何もなくて


ただただ、あの家の汚点になることしか考えてなかった。