「誰を殴るだって?」 今この瞬間、時間が止まった気がした。 さあと血の気が引いただけの空気と別の気配が混じる一室。 酔いが覚めてしまうような人物。それが彼だった。 女性陣、私も含め、立っている彼から目を離せないでいた。誰か一人、口をあけっぱなしかもしれない。 綺麗だった。 ため息や声が出ないほど綺麗な人。 かっこいいじゃない、綺麗。中性的な顔立ちは美しいという文字を背中に背負わせているみたいだった。 「クルキ……、あ、いや、その……遅かったじゃん」