「卒業式と恋。」

秋が来た。

勉強をしなくてはならない。将来のことを考えて、勉強もしなくてはならないのだ。

夜は長い。

そのときだった。秋が家にやってきて勉強しよう、と言い出したのだった。

雪:「何で急にボクの家で?」

秋:「屋敷だから見つけやすいじゃない。」

雪:「そんな理由!?」

秋:「そうよ。ふふ。それに言ったじゃない。」

雪:「え?」

秋:「いつか、遊びに行くって。」

雪:「あぁ・・・。そういえば・・・。」

秋:「だから、ね。」

秋は数学の参考書を広げた。どこの高校を受けるのかは分からない。

基礎的なことを復習するつもりでやってきたのだろう。雪にはさっぱりわからない数式がずらりと並んでいる。

秋:「さぁ。夜は長いわよ。勉強しなくちゃ。」

雪:「そうだよね・・・。うん・・・。」

秋:「どうしたの?」

雪:「えへへ・・・。」

雪は、秋を抱きかかえてキスをした。

海でしたキスとは違って、ふわり、と浮かび上がるようなキスだった。

秋は、拒絶(きょぜつ)しない。いつの間にか秋の腕が雪の腰を抱(だ)いている。夜は、長かった。


そして、勉強が始まった。

分からないところだらけだったが、秋に教えてもらいながらようやっと解(と)けていた。分かり始めていた。

苦笑いを浮かべる秋。とてもとても楽しい時間だった。


秋が過ぎ去っていく。勉強はたっぷりとした。

冬に受験があるが、それも受かりそうだ。秋と、同じ高校に入れるのだろうか。

秋は高校の話しを全くしてくれないのでどこに受験するのかは分からなかった。

できれば、同じ高校に行きたい。しかし、違う高校に行くと決まったわけではない。

雪は、勇気を持って秋に聞いてみた。

雪:「秋は、どっちの高校に行くの?」

秋:「あたし・・・。県外に行くのよ・・・。」

雪:「えぇっ!」

秋:「今まで黙(だま)ってたけれど・・・。」

雪:「そんなぁ!」

秋:「ごめんなさい・・・。」

雪:「・・・。」

決まってしまった。いや、以前から決まっていた事なのかもしれない。

それでも、それでも雪は笑顔でこういった。