「卒業式と恋。」


そうして、「そこ」に到着した。秋が立っている。

足音を消して忍(しの)び寄る。

秋は気づいていない。そして。

雪:「待っててって言っても待ってないワルイ子にはこうだ!」

秋:「あっ。雪?」

雪:「えへへぇ!」

きつく、苦しくなるくらいきつく抱きしめた。

寒い、雪の降る「そこ」で二人はじゃれあった。まだ冷たい季節、そこだけは暖かな春が来ているようだった。


そして、卒業式の翌日。

秋は行ってしまった。


雪は秋が乗っているタクシーを呆然(ぼうぜん)と見ていた。この街から出て行ってしまう。

それがどういうことなのか、いまやっと理解できたような気がしていた。


手を振る事はしない。

また、会えるから。大丈夫。と目配(めくば)せをされたような気がした。


おしまい。