【完】私と息子に幸せをくれた人(中篇)

「零士の父親って…勇士か?」



「―――え?」



思わぬ発言に、私は“そうです”と、肯定するような反応をしてしまう。

聖さんを見上げたままの私に、聖さんは額をくっ付けて来た。



「俺、零士の父親になりたい。
勇士なんて、越えてやるし…」



「私は恋なんてしない」


嬉しさは十分に感じた。

でも、私は恋を二度とするつもりはなかった。

キッパリと言い放った私に、聖さんは「諦めないから」と言って離れた。

“諦めないから”と言いながらも、寂しそうな顔をした聖さんに、胸が少し痛む。

けど…、これで良いんだと、私は自分に思い込ませた。