クラスも部活も違うし、一緒に帰ることも少ないんだよね。
「今日の昼休み、空間図形教えてくんない?」
「いいよ」
「ありがと~。じゃ、昼休み来るね」
「うん」
 実は、波香には好きな人を言ってない。
 波香は私に好きな人を聞いてこない。
 私も波香には好きな人を聞かない。

 掃除が終わり、昼休み。
 波香と一緒に昼休みを過ごすなんて、久しぶり。
「石橋~!」
 慎也が私を呼ぶ。
 慎也に「石橋」と呼ばれると、胸が苦しくなる。
「あ、波香」
 教室のドアのところには、波香が立っていた。
「ねぇ、咲月のこと名前で呼んで」
 え、何言ってんの?波香。
「……」
 慎也は口だけ動かして、声にはだしてくれなかった。
「ちゃんと声にだして言って」
 いいよ、言わなくて。
 恥ずかしいじゃん。
「……咲月……」
 え?今、「咲月」って……。
 無理やりだったけど、嬉しかった。
 だって普通は、やだって言うでしょ?
 慎也は、恥ずかしくないの?やだって言わないの?