『…夕緋、ホットミルクが飲みたい』



月を見上げながら一夏は言う。



「うん、いいよ」



夕緋はそれを受け入れてくれ、いそいそと簡易であるキッチンへと向かった。
お母さんみたいだな、なんて思いながら一夏は目を瞑る。

…温かい。

人が一人、この家に増えただけでその場の環境が温かくなったかのように感じた。

いつもはあんなこと言ってる、ばかな友達とは分ってても、それでもいつも俺の隣りにいてくれていることには感謝はしてる。

そんな穏やかな時間が俺は好きだ…

時間は確実にゆっくりと刻、一刻と過ぎ去る。
いつの間にか、瞼が重くなり一夏は小さく吐息を漏らしていた。

夕緋が新しいホットミルクを持ってきた頃には、完全に一夏は熟睡していた。



「おやすみ、一夏」



毛布を一夏に掛けながら、夕緋は声を漏らす。



一夏、いい夢を…
そして、君が幸せに想える未来を願って…



窓の外を見上げれば、先程までとはまた違う、丸い丸い綺麗なお月様が其処には輝いていた――…