佐野先生と一緒にどれくらいバーにいたんだろう。
その後のことは不思議なくらい、全然覚えていない。
───────────・・・
あれ、なんだろう。温かくて…気持ちいい。
そんなことより、ここは…どこ?
「古賀先生、桜木町の何丁目?」
「えっと、5丁目……」
半分、意識がないまま…そう答えた。
「了解。運転手さん、5丁目までお願いします」
「はい」
ん…佐野先生が誰かと喋ってる。
ゆっくり重たい瞼を開くと、タクシーの中であたしは佐野先生に抱き寄せられるように胸に体を預けていた。
そして佐野先生と目が合う。
「あっ、すみません」
体を起こそうとするけど、佐野先生大きな手があたしの肩を離さなかった。
「こんな時ぐらい甘えたら?」
「でも……」
「古賀先生、飲み過ぎだよ。大丈夫?」
「……はい」
「って…そんなトロンとした目しちゃって。全然、大丈夫に見えないし」
「ホントに大丈夫です。あっ、あのマンションです。運転手さん、ここで降ろしてください」

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