春は来ないと、彼が言った。



「詳しく聞かせてよ」



その口元には薄らと怪しげな笑みが浮かんでいて、頬の赤みはもうだいぶ引いていた。


睦くんに言われたことが嬉しかったのか、妃ちゃんの表情がぱあっと明るくなった。

ほんと、可愛いなぁ…。



「最近ずーっと、春が来てないでしょ」



さっきの春の話はここに繋がっていたみたいだ。


わくわくしながら話の続きを待つ。



「…夏、秋、冬が3月以来もう5回以上巡ってるの」



もうそんなに巡ってた…?