春は来ないと、彼が言った。



「いやー、参った参った。お腹空いて死ぬかと思ったよ」



にへらと曖昧な笑いを返し、睦くんも恢と同じようにパンにかじりついた。

いつもは大人びているのにこの瞬間だけはひどく子供っぽく見える。


だからわたしは、睦くんの食事風景が好きだった。



「ほむ?…ごくっ、なに椛ちゃん、欲しい?」

「ち、違うよ!!」



し…しかもそのパン食べちゃったら、かか、か、間接キスだし!