春は来ないと、彼が言った。



「……ありがとう、恢」

「ん」



昨日もこんなやり取りをした気がしつつ、おとなしくそのおにぎりを口に運んだ。


…ご丁寧に包装まで剥がしてくれる恢は、やっぱりちょっと過保護すぎないかな。


そんなことを思いながら、満腹だと言い張る胃におにぎりをむりやり押し込んだ。

それでもちゃんと美味しいのはわかるから、多分無理のしすぎではないはず。



「なに笑ってんだ?椛」

「…んーん」



こういうまったりした空気、好きだなぁ。

睦くんがいないとやっぱり妃ちゃんたちの元気がなくて、ちょっと寂しいんだけどね。