春は来ないと、彼が言った。



「妃ちゃん?」

「おはようの、ぎゅー」



そう言って少し屈んでわたしを抱き締めてくれた妃ちゃんに、くらりと視界が揺れた。

…ああもうほんと、言葉が出でないくらい、ノックアウトです。



「妃ちゃん好きー!」

「私も椛ちゃんのこと、睦兄と同じくらい好き」



それってつまり最高位…!?

なんて思いながら抱き締め返すと、くるりと向きを変えた妃ちゃんがわたしの膝の上にすとんと座った。


不安そうに振り返るその表情がまた可愛くてしょうがなくて、どうもしていないのにわたしは何故か鼻を押さえていた。

重たい?って訊いてるんだろうけど…。