春は来ないと、彼が言った。



妃ちゃんと藍くんはまるで本当の兄のような睦くんを「睦兄」と呼び、慕っている。


どうしてわたしと恢がこの2人と仲良くなれたのかはっきりと覚えていないけど、多分恢と睦くんが友達だったからだ。

そうじゃなきゃ、こんな平凡なわたし、友達になれなかったと思う。



「おはよ、妃ちゃん、藍くん」

「椛ちゃん、今日も可愛いね」



ぴくりとも表情を変えず、抑揚のないままに妃ちゃんが言った。