春は来ないと、彼が言った。



…意外と目付きが悪い。


対して睦くんはふにゃっと全部が全部柔らかくて、モテモテなのも納得だ。



「えー?オレ恢みたいな顔してた?」

「お、お前っ…!!」

「ぁいたい!」

「ちょっ、なにしてるの!?」

「…制裁」

「じゃれてんの♪」

「睦ーっ!!!」

「あははっ!」


「(仲良いなぁ…、羨ましい)」



わたしを挟んで歩きながら睦くんに突っかかる恢を見ていたら、漠然とそう思った。


…なんだろ、このもやもやしたの。

恢が、睦くんを―――わたしじゃないひとを見てるの……嫌かも。


今までこんなこと、一度も思ったことはないのに。


睦くんに悪い気がして、わたしはずっと下を向いたまま歩いた。




教室までの距離が、やたらと長く感じた。