春は来ないと、彼が言った。



その瞳は、どことなく…どころか、誰の目にも一目瞭然なくらい怒りの色を灯している。



「ば…バカって言った!昨日も言ったよね!」

「はあ?椛がバカすぎるから教えてやってんの」



恢はやれやれと頭を振り、ふっと目を細めて口端を上げた。

…これが恢の嘲笑だ。



「なっ!か、恢の方がバカなんだから!」

「いつもテスト前に勉強教えてやってんのは誰だっけ?」

「う、うぐっ…!」

「ほら、言い返せないだろ?」

「わ…わたしの方がずっと国語よかったもん!」


「椛は数学赤点、俺はトップ」


「あ、あれは……ま、まぐれだよ!」

「まぐれが3回続いてたまるか」

「か…恢の意地悪!ばかー!」

「はいはい」

「もう、わたしのことバカにしすぎっ!」





「…あのー、2人ともオレのこと忘れてない?」




はっ!!