春は来ないと、彼が言った。



「恢のこと、そんなに好きなんだ?」



耳朶に触れるのは、熱の籠った吐息。

脳に響くのは、低く掠れた甘い声音。


ぼふっ!と効果音を付けて顔が真っ赤になったのが嫌でもわかった。


…フェロモン全開っていうのかな、今の睦くんみたいな人。



「り、睦くっ…!」



逃れようと身体を捻ると、それを阻止するようにぐっと腰を引き寄せられた。


もう片方の手はわたしの背中に回されていて、身動きが取れない。



「妬けちゃうなぁ。恢ばっかりずるい」