春は来ないと、彼が言った。



ひ…ひゃぁぁぁぁっ!!

り、りりりり睦くんの腕が背中に回ってる!!


だ、抱き留めっていうか抱き締め、だよこれは!!


1人であわあわと焦って赤面していると、堪えきれなくなったように睦くんが吹き出した。



「くくっ、…ははははっ!椛ちゃん驚きすぎだって!オレが痴漢みたいじゃん」



目に涙を浮かべるわたしを見て、睦くんはさらに笑い声を上げた。

睦くんの目にもいつの間にかうっすらと涙が溜まっている。


お、思いっきり笑われてるよ…!

どう反応すれば良いのかわからなくて硬直していると、睦くんの顔がそっと近付いてきた。


さっきまで笑い転げてたのが嘘みたいな、すごい真顔で。




え?