あんなに咲き乱れていた桜の花は、すべて綺麗な花びらとなって地面に落ちている。
儚さを感じる間もなく散ってしまった。
…そんな、まさか。
「ぷっ…あはははははっ!!」
「な…なんだよこれ、…はははっ!」
めらめらと燃えるような太陽が顔を出す。
春の匂いはもうしない。
代わりにあるのは、あの暑くてじめっとした空気。
肌に纏わりつく不愉快なブラウス。
生温いなんともいえない気持ちの悪い風。
「…夏が来たんだね」
「………春、3時間も経たないうちに終わったな」
涙が出るほど笑いながら。
葉桜に向けて早くも準備を始めている大樹を見上げ、立ち上がった。