春は来ないと、彼が言った。



さっきまでは堅い蕾だったのに。


ひとつひとつ、それぞれがゆっくりと綻んでいく。

ビデオで撮影したものをスローモーションで見ているようだった。

それくらい速いスピードで開花が進む。


薄桃色の蕾を縛っていた糸が解けるように。

突然、柔らかさを持ち始め。

瞬きをひとつすると、桃色の花弁がそっと拡がっていく。


今にも風で散ってしまいそうな儚さを抱いて。