春は来ないと、彼が言った。



なんとなく空気が悪くなり、そのまま地面に視線を落とした。


そういえば、ここってどこなんだろう?


どこか懐かしい風景に、記憶が呼び起こされる。

そよそよと風になびく緑の葉。

咲き乱れるかぐわしい花。

目の前にどっしりと構えるのは、幹の太い大樹。

枝の先には薄桃色の蕾。



…………あっ!




「やっと思い出したか?」