春は来ないと、彼が言った。



ただ。


まどろみそうな春の陽気の中で、恢の後ろ姿を網膜に焼き付けた。

あの日の放課後、恢に抱いた恐怖を掻き消すように。

上書きするように。


今の、わたしの好きな、恢だけを見つめた。



…やっぱり、大好き。



器から溢れ出る感情を押し殺すこともせず、わたしは幸せに酔いしれた。