春は来ないと、彼が言った。



どうして、



そんな穏やかな顔でわたしを見るの。



ねぇ、―――――








「か……恢っ!?!?」








どうして、春の訪れと共にやって来るの?


感情を押さえつけていたはずの蓋は、知らない間に消え去っていた。



留め処もなく溢れ出す想いを確かに感じながら、彼―――恢の名前を呼んだ。