「…泣いていいよ、椛ちゃん」



ふわっ。


力強く引き寄せられて、そのまま睦くんの胸に埋もれた。

知らない香りが鼻腔を満たす。

恢とは違う、甘くてくらくらする、お菓子みたいな匂い。


不思議と嫌じゃなかった。



背中にしっかりと腕が回り、いつかのように抱き締められる。

…ああ、そうだ。

階段から落ちそうになったときに、わたしを抱き留めてくれたんだったね。