「後で長谷川に謝れよ」



兄貴がそう言うと私は箸を止めた。



「嫌や。
面倒くさい。」



私はそう言って納豆をかき混ぜた。



「うわ、くっさ!
こっち寄んな!!!」



兄貴は納豆のニオイが嫌い。



私は兄貴の鼻の頭に納豆を一粒乗せると、
兄貴は大慌てで鼻を叩いた。



そのせいで兄貴の鼻の頭は赤くなっている。


朝食を済ますと、
荷物も引越し屋さんに引渡し、私たち家族は駅へと向かった。



「おい、今頃長谷川落ち込んでんぞ」



兄貴は大きな荷物を持ち、肩が右側に下がっている。



「うっさいなあ。
後でメールしとくよ」



私は荷物を兄貴の左の肩に掛け、バランスの取れた兄貴。



「美希!!」



駅の改札口を通ると、駅の入り口には長谷川がいた。



「美希!!
俺はお前の事が好きや―――――――!!」




………え?な、何?こいつアホなん?



こんな公衆の面前で告白するとか寒いし……。

私は唖然としていた。



「俺のもとへ戻ってきてくれ!!」



…いや、戻ってきてくれも何も、
あんたのもとに居たことないから。



「東京なんかに行かんといてくれ!!」



「いや、それは無理やろ。」



私がそう言うと、電車のドアがプシューと音を立てて閉まった。