私は、
何気なく入った事に無い屋上へと足を踏み入れた。

屋上のドアを開けると、
夏の生ぬるい風が体を通った。



「あ…」



ここにいたんだ。
ヤツは。



妖精は体育座りをして空を眺めていた。



「何してるん?」



私が妖精に声をかけると、
ヤツは顔を少しだけこちらに向けた。



「ミッキー…」



いつもより、
声を低くして


顔をまた戻した。




やっぱ、
気付かへん方が良かったんかも…。




気付いても、
知らない振りをすれば良かった。



「あ、あのさあ、
テスト結果見んでよかったん?」




妖精は軽く頷くと、
また顔を空に向けた。

「凄いなあ
アンタ。

一位やったで」



私は何故か、
ヤツに話しかけ続けていた。



「…別にもう、
……どうでもいいんだよ」



え?



「桜井先生は、
別に俺が一位取ろうが取らなかろうが、
どうでもいいんだから」



妖精は背中を丸くした。