「…おぼっちゃま達とは上手くいってないんですか?」

ふいに、昨日の翔さんのコトを思い出す。

……あんまり考えないようにしてたんだけどな。


心配そうな顔をしている高瀬さんに向かって、薄ら笑いを浮かべた。


「そ…そうですねぇーアハハ。
予備校も、学年が違うので会いませんし…」


私の下手な笑いに気付いているのか、高瀬さんの瞳は哀しみの色が濃い。


「おぼっちゃま達のこと…
悪く思わないでくださいね?」


高瀬さんは、真剣な瞳で私の視線を捉える。
いつもニコニコしている高瀬さんだから、
余計印象的だった。


――昨日の今日で……高瀬さんタイミングいいな…。
悪くは思わないけど、怖いとはやっぱり思っちゃうよ。


でもそんなこと上手に言えるほど私は器用でもないし、正直でもない。


「は…っはい……」

「じゃ、お勉強頑張ってくださいね♪♪」

私の返事に満足したような笑顔の高瀬さんに私は胸を奥が痛くなった。


でも、どうして?

……高瀬さんが、
あんなに黒崎兄弟を庇うなんて。


お手伝いさんだから…?

……


私は翔さんの昨日の辛そうな顔が頭に浮かんだ。