「出かけるところだったんでしょう。ごめんなさい。でも、居ても立ってもいられなくて…」


フローリアはアデュスの肩に手をかけながら、優しく言った。



「エフォナとの件、夫から聞いたの。エフォナの将がアデュスの身柄と引き換えに停戦をすると言ってきたって」


「昨日、軍から直接連絡があって…一月後にエフォナ側に入国するよう言われたわ」


アデュスは努めてサラリと答えた。



「アデュス、遠くに行くの?」



二人のやり取りを見て、今年8歳になるリュダが小さく問うた。アデュスはそんなリュダを膝に抱く。



「エフォナの砂漠に、お花をたくさん植えに行くのよ。お野菜や、小麦もね。緑でいっぱいにしてくるの」


「…いつ帰ってくるの?」

「砂漠が緑の大地に変わったら、かな?」



アデュスはあえて明るく笑った。リュダはフローリアと同じ湖水色の瞳でアデュスをまっすぐに見据える。



「ハダサと離れ離れになるの?」



問い掛けに、アデュスの心が痛んだ。