「なぁ、ヒロヤ。お前、何で高3で転校してきたわけ?」


ヒロヤが転校してきた時から感じていた疑問。


それをヒロヤにぶつけると、ヒロヤの顔から笑みが消えた。


「早い話、親が離婚したから。俺の通ってた高校って私立だっただろ?だから、学費の安い公立に転校してきたってわけ」


「そうか」


「今はお袋に引き取られて、モモと3人で質素だけど楽しく暮らしてる。生活も苦しいしバイト三昧だけどな」


チャラチャラしていて、常に女を追っかけまわしている印象の強いヒロヤ。


女をとっかえひっかえしているのも、複雑な家庭の事情が関係しているのかもしれない。



そう思うと、何とも言えない気持ちになった。



「あっ、そういえば……これ!!ありがとな?」


すると、ヒロヤは体操着から取り出した何かを俺の手に握らせた。


「は?なんだよ」


「もしかして、忘れてたとか?」


手の中にある、一枚の5000円札。


「これ、なんなんだよ」


そう尋ねると、ヒロヤはフッと笑った。