「あ、そういえば」と由紗がまた別のお祝いを催促しようとしてきたので、「わかったわかった」僕は由紗の言葉を遮った。



「わかってるよ、由紗ちゃん」実際、わかっていた。聞かれなければ“そのとき”まで黙っていようと思っていたけど、仕方ない。「卒業祝いも、合格祝いも、入学祝いも用意してあるよ」



「やった!」と由紗がガッツポーズをする。「3つも用意してくれるなんて、さすが龍くん」



「でも今日はあげない」僕は由紗の頭を撫でた。「3年後にまとめてあげるよ」



「なんだそれ」ぷぅと由紗が口を膨らませる。「ほんとはまだ買ってないんでしょ」



「さあね。でも今日はがまんして」


由紗を抱き寄せ、目をつむり、唇を合わせた。


やわらかな感触。演技では感じられない高揚感。


「好きだよ、由紗」



 カバンに入れたままのプレゼントとは、3年後、由紗が高校を卒業するまで隠しておこう。


卒業祝い兼、合格祝い兼、入学祝い兼、



結婚指輪は。



おしまい