微睡みから一変
意識が浮上する。


ぼんやりとした視界がハッキリすると同時に
自分とは違う体温を感じて
今、自分が置かれている状況を察した。


――押し入れの中じゃない。


緩慢とした動作で顔をあげると一人の男と目線がかち合った。


「お、目ぇ覚めたか」

「………」


なんでよりによってコイツなんだ。

私はトシの膝の上に居た。

思わず眉間に皺を寄せてしまう。


「何だお前、不満そうじゃねぇか。猫のクセして」


グリグリと人差し指で眉間を押される。

実際不満なんだよ。お前から逃げたのに。



雨音が強くなる。


「お前、瑠偉がどこにいるか知らねえか?」


雑音にかき消されず
真っ直ぐ耳に入ってくる。


「…知るわけねぇ、よな」

「………」


あぁ、もう知らん。
馬鹿め。


もう、良いや。