それからは、なんというか………地獄だった。
林には、副長がいる。
俺は何も行動に移せない、何も伝えられない。
―――気付かなければ良かった。
こんな、苦しい感情なんて。
『斎藤さーん。』
俺の部屋の襖を開け、ひょこっと顔だけを覗かせる林。
「…なんだ?」
『試合したくなったんで。たまには私の方に付き合って下さい。』
そう言って微笑んで
竹刀を渡してきた。
……コイツの強さとか、こういう笑顔が好きなんだ。
―――知らぬが仏。
確かに知らない方が楽だった。
でも知ってしまったからには
俺はこの気持ちを隠し続け
この気持ちが消えるまで
想い続けよう。
【END】