―病室―

「・・・文香?」

「あ・・・良太起こしちゃった?ごめん。」

「理恵、今、文香の声しなかったか?」

「・・・気のせいじゃない?夢でも見てたんだよ。」

「そうか。夢か・・・?」

少し笑って、良太はまた深い眠りについた。
 



文香はその日、冷たくなった、病院の待合室で目覚めた。窓から薄明かりが射している。


「結局、良太に、会えなかったな。」


泣きたいくらい寂しくなった。外に出ると、冷たく澄んだ空気が、まだ眠たい体を目覚

めさせる。


「仕方ないね。辛いけど、」


椅子で寝たから、ちょっと、からだが痛い・・・重い足をひきずって、その日、そのま

ま、文香は学校へ向かった。