ハナウタ

こんなに話していて、京介を遠くに感じた事はなかった。







たかが、恋愛で…









あまりの虚しさに、ついそんな考えが浮かぶ。




「なんでよりによってお前が…お前が楠木を俺から奪うっ!?」










京介の中には、抑圧されてきた激しさがあった。

親戚の中であまり歓迎されない結婚を遂げ、その二人の間に生まれた京介は粗探しの恰好の標的だった。



きっと、こいつ自身知らなかったんだろう。


必死に築いてきた"柏原 京介という優等生"という人格の下に、一人の人間にここまで執着する、激しい自我があるなんて。



京介が叫んだあとの沈黙を破ったのは、俺でもなく、京介でもない。





…ガラ…

「えっと…忘れ物、しちゃって…」



「楠木…」











京介の顔から、血の気が引いていくのがわかった。




そして、部屋に入って来たカヤの顔が、全くの無表情だったことも、俺には不安だった。