ハナウタ

「あの絵は…?」


俺の視線の先を察し「あぁ、あれ?」と話し出すカヤは幸せだった日々を思い返すような、幸せそうな顔をした。

それを見た瞬間、俺の意思では動かない胸の中枢がぐっ、と収縮するような感覚がした。




「中2の、終わり頃に描いたんだ。
これは…気に入ってるから」



そんなカヤを見て、こんな表情、出来るのか、と感じた。

カヤはいつも、人といてもいつも一線置いたように曖昧に笑う。




俺が他人の前でお調子者を演じるように、
京介が知らずのうちに優等生でいようとするように。
カヤは、ただ筋の通った、矛盾のない人間であろうとしていたのかもしれない。


だから俺達は一緒にいて許し合えて、一緒にいたいと思えたんだと思う。




















シカトがなくなったらしい、次の日。

俺は京介に呼ばれ、放課後二人っきりで資料室に行った。




京介は、俺が保健室でカヤにした事を、見ていたらしい。

その時ほど京介が全く知らない赤の他人に見えた事はなかった。




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