玲奈ちゃんは少し俯き、指先をくるくると回している。
「そ、それは…その……」
「えー?何なにー?軽音部のファンっすかー?俺のファンっすかー?」
急に教室から出てきたのは、とても派手な男の子。
手には楽譜らしき紙を持っている。
どうやら、玲奈ちゃんと同じ軽音部のようだ。
「でもー残念な事に俺、まだサインの練習してないんっすよねー。ってことでまた今度!」
「ちょ、ちょっと緒方くん!」
「はいはい、行くよー玲奈っち」
玲奈ちゃんの背中を押し、ぐいぐいと連れて行く。
教室の中を覗くと、誰もいないようだ。
「ちょ、ちょっと待って!聞きたいことがあるんだけどっ!」
緒方くんは顔だけを此方へと向け、首を傾げた。
「なんすかー?その歌うまくんのことなら俺は何も教えないっすよー」
「そうじゃなくて」
それも気になるけど…。
今は、その子ではなく、伊織くんを捜しているんだった。
「伊織くん、知らない?」
「え。伊織?伊織ならもう帰ったか、屋上とかじゃないっすかね?」
「そっか。ありがとう」
「いえいえーではー」
そそくさと緒方くんは玲奈ちゃんを連れて行った。
そうだよね。放課後だし、帰ってる可能性はあるか。
もしくは屋上…。
とりあえず、屋上に行ってみて、いなかったらまた考え直そう。

