電車を降りた後、一くんが逃げないようにか手首にロープを巻き、それを握っていた。
「では、浅井さん。本日はこのバ…若が迷惑を掛けてしまい、申し訳ありませんでした」
「ううん。大丈夫だよ、楽しかったし」
「あ…ちょっといつき、離せ」
「離すわけないじゃないですか」
「逃げねーから!ちょっとだけ!」
そう訴える一くんに溜め息をこぼしながら、握りしめてたロープを放した。
一くんはつま先から頭までじっくりと私を見る。
な、なんだろう…。
次に一くんは手招きをする。
「何?どうしたの?」
近づいた途端、チュッとリップ音がした。
かと思えば、すぐに耳元で囁かれる。
「今日はありがとな。言い忘れてたけど、静音すげー可愛い」
そして離れると満足げな表情をし、いつきくんに手首を出した。
「ほら、帰るぞ。いつき」
「浅井さん動かなくなってますけど大丈夫ですかね」
「ん?え?おい、静音?大丈夫か?どうした?」
まさかこの人生の中で、しかも結構な短期間で頬にキスをされることが2回もあるなんて誰が想像しただろうか。
恥ずかしさというかなんというかよくわからない感情でいっぱいである。
肌寒い季節だというのにとても暑い。いや、熱い。
心臓の音が聞こえてきそうなくらいだ。

