一くんは鞄をごそごそと漁ると、マジックペンと色紙を取り出す。
そしてそれを絢歩さんへと渡した。
「ユーキ描いてくれる約束だったよな!」
「あぁ…そういやそんな話してたっけ」
ユーキ…?
一くんと初めて会った時、なんか私にそっくりだって騒いでた子の名前って確かユーキって言ってたよね。
絢歩さんは迷いなくペンを走らせる。
「一応シトのサインも!」
「一応ってなんだ一応って」
数分後、どうやら描き終えたようで、ペンのふたを閉めると一くんに渡した。
そこには女の子といっしょにサインが描かれていて、一くんはとても嬉しそうにその色紙を眺めている。
ユーキって子はキャラクターだったみたい。
自分でも少し似ている気がする。
「静音見ろ!ユーキだぞ!しかもシトが描いたやつ!」
「う、うん。良かったね」
「え…なんでそんなにテンション低いんだよ。あのシトが描いたユーキだぞ?」
「え、うん。絢歩さんが描いたユーキね」
一くんがとても嬉しいのはわかる。
絢歩さんがあの短時間でこんなに上手な絵を描いたのが凄いのもわかる。
でも、「あのシトが描いたユーキ」という部分がわからない。
そんなに絢歩さんが描いたユーキは凄いのだろうか。
「もしかして静音…。自己紹介の時から薄々思っていたが、シトを知らないのか…!?」
「うん。初対面だし…」
私がそう答えた瞬間、一くんは「信じられない」という顔になる。
まるで誰もが知っている有名人を知らないとでも言いたそうな顔だ。

