仁に「好きなようにしていい」と利用されたことに加え、一度、「いいよ」と承諾した手前…
断ることも出来ず、土曜日となってしまった。
どうかいつきくんに怒られませんように。
そう祈りつつ、月桜の校門の前で待つ。
土曜日の為、運動部を中心として部活動生ばかりが登校している。
「わりー静音、待たせた。いつきから逃げる隙を窺ってたら時間がかかってな」
「ううん、大丈夫。私も今来たところだよ」
息を切らしている一くん。
いつきくんから逃れる為に、すごく走って来たんだろうな。
「もう1回言ってくれ」
「え?」
「さっきの!今来たところってやつ!漫画に載ってたデートみてーだ!」
目をキラキラと輝かせ、なぜか携帯を手にしている。
もしかして動画でも撮る気だろうか。
デートとまで言われるともう一度言う気にはなれない。恥ずかしい。
「早く行かないといつきくん来ちゃうよ。行こう」
「あ!そうだったな、急がねーと!」
ぱっと私の手を自然に握る。
動揺し、立ち止まっていると首を傾げた。
「どうした?静音。早く行かねーと」
「いや…あの…手……」
「手?手がどうかしたか?」
「なんで手を繋いで…」
「なんでって好きだから当たり前だろ。それにデートだし。えーっと東だからこっちか!ほら行くぞ静音!」
一くんは全く気にしていないようで、私をひっぱり歩きだす。
デートといえどまだ友達なわけだし、私としては手を繋ぐのは恥ずかしい。
これならさっきの台詞をまた言ったほうがましだ。
強く握られた手は離してくれそうにない。
…そうだ駅。駅に着いたら切符を買うからその時は手を離すはず。
それまではどうにか知り合いに会わないように祈ろう。

