栗原の長い長い話に付き合わされ、いつの間にか時間が経っていた。
「あら、もうこんな時間。柊也とお話していたらあっという間ね」
一方的に話されただけだが。
栗原はポケットから携帯を取り出すと、タイミング良く着信音が鳴った。
「もしもし?しんくん?……ちょうど電話をしようと思っていたところなの。流石しんくんね♪…………え?もうすぐって場所わかってるの?」
「勿論。わかってるよ」
「あら♡」
声のした入口を見ると笹島がいた。
立ち上がると、いつものように甘ったるい声を出し、抱きつきに行く。
あー…外でやってくれ。
「どうしてわかったの?」
「そりゃあやちゃんの行きそうな場所なんて俺にはお見通しだよ」
「あらやだ♡私のことはなんでもお見通しなのね♡」
どこでもお構いなくイチャつき始めるのをやめてもらいたい。
しかも部室の入口で。
「ねぇねぇしんくん。明日はどこに行く~?」
「んー…どこにしようかなぁ」
そういえば明日は土曜か。
つーことは、今日は金曜…金曜……なにかあった気がする。
大事な用事だったような、そうでもなかったような。
目の前にいるイチャつきバカップルの会話がうるさくて思い出せない。
「あれ?笹島さんに栗原さん。こんにちは。何かご用ですか?」
「ううん。俺はあやちゃんを迎えに来ただけだよ」
「私は柊也とあーんなことやこーんなことして遊んでたの♡」
「あはは、なるほど。…あ、柊也。なんか咲也くんがメールの返事をくれない、って言ってたわよ」
「メール?」
ポケットの中に手を突っ込んでみるが、携帯はない。
そういや鞄の中にしまっていたか。
どうりで気づかなかった。

