体育館に着くと、しーんっと静まり返っているだけ。
やっぱり誰もいない。
柊也と約束してたのに…私、破っちゃったな……。
しかも凌久くんが折角、一番前の特等席を用意してくれていたのに。
一番前の席に座り、誰もいないステージを見つめた。
柊也が桜に練習をみてもらっていた時に少しだけ演奏を聴いたけど、あれは確かにどこかで見覚えのある弾き方だった。
あの独特な弾き方は…
「いたっ!」
突然後ろから軽く頭をペットボトルのようなもので叩かれた。
振り向くとそこにいたのは…
「だ、誰…」
知らない人だった。
初対面の人に頭を叩かれるなんて…
というかこの人、人の頭を叩いて失礼だとは思わないのだろうか。
確かに誰もいない体育館に1人でぽつんといたら怪しいけどさ。
「お前来るの遅すぎ」
「この声…柊也?」
髪型が変わるだけでこうも違うの…
ってこれは笹島さんの時に結構証明されたか。
それにしても、いつも無造作っぽい髪型の柊也がこんな風な髪型をするとなんというか…かっこいいかも。
「何?」
「え。いや…なんでもない」
「そ」
柊也は私の隣に座り、ペットボトルに入った水を飲んだ。
また体育館はしんと静まり返る。
な、何この空気……。
あ。そうだ。私、約束破っちゃったんだ。
だから柊也怒ってるのかな。

