犬と睨み合って数十分。

遠回りして行ったほうが早く着いたかも。

でも今更…しかも背中を向けた瞬間、何をされるか…。

犬はどこにも行こうとせず、ずっと私を見続けている。

いや、移動されてもドキドキするんだけど。


「…おい」

「わっ!?しゅ、柊也!?」


突然腕を引かれ、振り向くと少し息を切らした柊也がいた。


「何やってんだよ、こんなところで」

「柊也こそ、どうしてここに…」


家、逆方向だし。

もう授業も始まる頃だし。


「お前をさが…いや……あの…」

「…………?」

「…なんとなく……だ」


なんとなくで家の逆方向に来るかな。

っていうか、なんのために。

学校行かなきゃでしょ。


「で、お前は何やってんだよ?もう授業始まるぞ」

「わかってる…けど……」


私は犬の方を指さすと「はぁ…」と深い溜め息を吐かれた。

なんなのその溜め息は!しょうがないじゃん!

苦手なものは苦手。


「お前…本当ムカつく……」

「なんでムカつかれなきゃいけないの」

「……はぁ…」


また呆れた顔で溜め息。

そして犬を通りすぎて向こう側へ。

そのまま歩いて行く。

犬をどこかにやったり、押さえててくれたりしてくれたっていいのに。

柊也を訴えるように背中を見ていると、振り返った。

そうしてまた戻ってくると、私の手を握った。


「えっ!?あの、柊也…?」

「俺が犬側通ってやるから行くぞ」

「う、うん」


手を引いて歩いて行く。

結局は優しいんだよ…柊也は……。

なんだかよくわからない気持ちのまま、学校へ向かった。